タクミシネマ         ダーウィン アワード

ダーウィン アワード   フィン・タイラー監督

 不可解な死に方をした人に、ダーウィン賞というものがでるのだそうだ。
授賞理由というのがおかしい。「最も愚かな方法で死んだ人に対し、バカな遺伝子を減らしたことへの感謝の気持ち」だという。
これは実在の賞らしい。 http://www.darwinawards.com/
 しかし、面白い主題なのに、なんか不完全燃焼というか、もどかしさというか、物足りなさが残った。

公式サイトから

 主人公のマイケル(ジョセフ・ファインズ)はおかしな奴だ。
小さな頃から推理が好きで、希望どおりに刑事になった。
ところが、なんと彼は血液恐怖症で、血を見ると失神してしまう。
犯人を追いつめながら、血を見たので失神し、取り逃がしてしまう。
おかげで刑事はクビになる。

 彼が次にむかった職業は、保険の調査員だった。
ダーウィン賞の対象になる人物を、保険金支払いの対象から外せば、保険会社は儲かるというのが売り込みだった。
そのため、不可解な死因をめぐって、調査員のシリ(ドリュー・バルモア)とともに全米を駆け回ることになる。

 超高層ビルのガラスは、絶対に割れないということを立証するために、ガラスに体当たりしたら、ガラスはあっさりと割れた。
もちろん彼は外へ飛びだし、地上へと真っ逆さまに、一直線ということになった。
こういった摩訶不思議な事件が、連続する。

 一つ一つの事件は、ほんとうにおかしい。
何でこんなことを思いつくのかと、その発想の奇抜さに唖然とする。
どの事件も、人が死んでいるのだから、笑ってはいけないのだが、やはりおかしい事件である。
しかし、映画全体としてみると、イマイチのフラストレーションがたまるのだ。

 事前に話の大筋はわかっていたので、ブラックな笑いが大好きなボクは、おおきな笑いを期待して映画観にいった。
たしかに個々の事件はおかしい。
有名になりたいために、乗用車にロケットをつんで世界一速く走ったら、山に激突して死んだ男ハービー(デヴィッド・アークエット)など、悲哀にあふれ実におかしい。
しかし、笑えないのだ。

 題材はおかしくて、笑おうとして映画を見ているのに、笑わしてくれない。
ずーっと、これが続いたのだ。
やがて、笑いたいフラストレーションがたまってきた。
アメリカ人とでは、笑うタイミングが違うのだろうか。

 マイケルの行動を追いかけ、ビデオに撮影して卒論にしたいということで、最初から最後までカメラが彼を追っている。
それが時には面白い効果も与えているが、全体的に見ると失敗だろう。
映画のなかにカメラを持ちこむのは、相対化の視線を目的としているのだろうが、画面が散漫になってしまう。

 ビデオ・カメラによる笑いの相対化と、映画の題材の笑いでは、質やリズムが違うので、ちぐはぐな印象になってしまった。
それが画面への観客の没入を妨げていたのかもしれない。

 主人公のマイケルは、レイフ・ファインズの弟だし、ヒロインは万引き癖から立ち直りつつあるドリュー・バルモア、ハービーの妻には天才女優ジュリエット・ルイスと、それなりの配役である。
それに死んでしまったクリス・ペンもでている。
それぞれにいわくのある彼(女)等は安いギャラだろうが、芸達者な人たちである。

 主題も良い、俳優も良い。なぜか面白くなかった。
マーズ アタック」や「オースティン パワーズ」など、アメリカには面白い映画があるのに、とても残念だった。
やっぱり面白い映画は、誰にでも作れるものではない。
秀作を撮る映画監督には、あらためて尊敬の念をもった。

   2006年のアメリカ映画
  (2007.12.12)

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