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ハリー・ポッター・シリーズも、第5作目である。 主人公のハリー(ダニエル・ラドクリフ)も成長してしまった。 とても子供とは呼べない大きい体になった。 今回の映画には、イギリスの有名どころの俳優が、大挙して出演しており、まるで俳優の虫干しである。
クリス・コロンバス、アルフォンソ・キュアロン、そして、マイク・ニューウェルと監督が変わってきた。 今回はデビッド・イェーツという、テレビ界上がりのイギリス生まれの、44歳の男性が、メガホンをとった。 どうしても前作と比べられてしまう。 しかも、前に4作もあるとなれば、秀作を撮るのは4倍の2乗も困難であろう。 という事情は判っていながら、やはり前作と比べてしまうのが、無責任な観客である。 まず物語の運び方が、とても大雑把になった。 小さくて可愛らしい魔法が、たった1つ封筒が喋るシーンをのぞいて、すっかり影を潜めた。 当初のように、ハリー・ポッターの身辺描写ではなく、魔法界をあげての展開になった。 原作が闇の帝王との対決となってきたので、仕方ないと言えば言えるが、ファンタジーの楽しさが半減している。 しかし、当サイトはこのシリーズには、点が辛い。 前4作のどれにも、星が付いていない。 同じようなファンタジーである「ロード オブ ザ リング」に比べれば、まだマシな感想がつづられているが、星は付いていない。 それは現実生活に基礎をおかない物語は、よほどの展開がないと嘘っぽさを越えられないからだろう。 映画は虚構である。 それならファンタジーこそ虚構の極地であり、観客を一時の夢の世界に連れて行ってくれるのは、ファンタジーのほうが優れていると思いがちである。 しかし、映画の虚構は、ある約束に支えられており、荒唐無稽だから面白いというわけではない。 星を2つ献上しているから、荒唐無稽だから評価しないわけではない。 当サイトの評価基準は、(1)新たな表現を提出したか (2)古典となりうるか、の2点だが、 ファンタジーはこの基準を超えにくいのだろう。 今回のハリー・ポッターは、仕掛けが大がかりになりすぎた。 これではファンタジーを楽しむのにも、想像力がよほど跳躍しないと届かない。 机の上の鉛筆に夢をふくらませることはできても、自分の日常から、闇の帝王を想像することは困難である。 机の前でぼーっとして夢見るには、身につけいる洋服や文具、それに家のなかにある小物が最適なのだ。 主人公は自分より少し勇気があり、元気であればいい。 得体の知れない闇の帝王などと戦いはじめると、映画への思い入れが遠ざかってしまう。 レイフ・ファインズやヘレナ・ボナム・カーターなどが、達者な役者であることは認める。 が、彼等を現実から遠ざけてしまう必要はない。 原作があるだけに難しいだろうと思うが、ファンタジーから遠ざかっているように感じる。 空想の世界を描くために、映画的にはcgが多用され、それがまた嘘っぽさを増してしまっている。 cgは表現の世界を広げるが、想像の世界を広げるわけではないので、使い方が難しい。 やはり人物の性格設定と、物語の展開という基本に戻るべきだろう。 あまりにもオドロオドロシくなってしまった。 ハリーの恋人に、アジア人(ケイティ・リューング)を配するのは良いとしても、恋人の性格設定が、待つだけの従順さといういかにものアジア人女性蔑視である。 彼女はスーパースターであるハリーに指導される存在で、しかも権力側に寝返るという展開は、何か意図的なものがあるのではないか。 イギリスの映画だからというわけではないが、新人ルーナ(イバンナ・リンチ)の登場の仕方と比べると、ちょっと人種差別的な臭いを感じた。 2007年のアメリカ映画 (2007.7.18) |
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