|
||||||
1800年代も末のロンドンでの話。 当時は奇術師がアイドルであり、スターだったらしい。 彼等は競って、奇術のタネを考案した。 一時は仲間だったロバート(ヒュー・ジャックマン)とアルフレッド(クリスチャン・ベール)は、 アシスタントの女性ジュリア(パイパー・ペラーボ)の死をめぐって、決定的に対立してしまう。
ジュリアはロバートの奥さんだったが、アルフレッドの縛り方が約束と違えたために、彼女は水槽から脱出できなかったのだ。 彼女はもがきながら、水死してしまった。 ここから復讐が絡んだ因縁の対決が始まる。 天才肌のアルフレッドが新たなネタを考案すると、すぐロバートがそれを追いかける。 しかし、このままでは映画が終わってしまう。 アルフレッドのネタが、どうしても判らないロバートは、アシスタントのオリヴィア(スカーレット・ヨハンソン)を、 アルフレッドのところへと潜り込ませ、ネタを盗んでこいという。 奇術師にはネタを考案する影の人物がいる。 アルフレッドにはファロンが、影の人物だった。 アルフレッド、セラ、ファロンそれにオリヴィアの4人が、一緒になって暮らすうちに、アルフレッドはオリヴィアと仲良くなってしまう。 しかし、ファロンの描写は極端に少ない。 ここがこの映画の第一のキモである。 映画はタネのさぐり合いと、アルフレッドとロバートの覇権争いを描いていく。 サラが地味な女性であるのに対して、スカーレット・ヨハンソンの演じるオリヴィアが登場すれば、男性がよろめくのは先が見えている。 スカーレットをキャスティングした段階で、男性のよろめきが決まっていたのだろう。 今やスカーレットが登場すれば、妻や恋人のいる男性がよろめくのは当然視されている。 アンジェリーナ・ジョリーの活劇と同じように、男殺しは彼女のキャラクターとなってしまった。 それに対して、ロバートのネタは、映画の上では約束違反になっていた。 映画はどんなに奇想天外な展開になっても良いし、不可能を前提に話を作っても良い。 しかし、最初に前提にした約束を、途中で反故にしてはいけない。 空を飛べない前提だったものが、何の説明もなく突然に空を飛んではいけないのだ。 それは映画を作る上での約束違反だ。 映画作りの約束破りをする後ろめたさからか、この監督は最初から伏線をたくさん置いていく。 同じシルクハットをたくさん見せたりするが、こんな伏線だけで約束破りは正当化できない。 ロバートはニコラ・テスラ(デヴィッド・ボーイ)という科学者に、空間移動の方法を発明させる。 それを人間で使って奇術とするのだが、 空間移動が不可能である以上、こんなネタを使うのは約束違反なのだ。 しかも、このネタは途中ですでに見えてしまっている。 奇術のネタを考案するのは難しいと思う。 しかし、だからといって最初の前提を、反故にして良いとはならない。 ありえない空間移動が可能だというネタなら、最初からその話を組み込んでおくべきだ。 途中で変えたら、話全体が成り立たなくなってしまうだろう。 空間移動が可能なら、ロバートのやったことは奇術も何でもない。 あれなら誰でもできる。 「メメント」で一躍有名になったので、お金がかけられるようになり、この監督は有名俳優も使えるようになった。 それを反映して、セットや舞台美術・ロケハンなどは、たしかに充実している。 しかし、映画の映画たるゆえんは、セットの豪華さや精巧さでもないし、有名俳優をキャスティングすることではない。 監督の訴えたい主題を、いかに説得的に映像化し、表現するかである。 そのためには、映画としての約束事があり、それを逸脱するのは余程のことがなければ、観客は納得しがたい。 オチにつまったので、最初の約束を反故にして良いわけがない。 強いていえば、コピー文化が情報社会の表現だとも言えなくはないが、それはちょっと強引な解釈だろう。 2006年のアメリカ映画 (2007.6.14) |
||||||
<TAKUMI シネマ>のおすすめ映画 2009年−私の中のあなた、フロスト/ニクソン 2008年−ダーク ナイト、バンテージ・ポイント 2007年−告発のとき、それでもボクはやってない 2006年−家族の誕生、V フォー・ヴァンデッタ 2005年−シリアナ 2004年−アイ、 ロボット、ヴェラ・ドレイク、ミリオンダラー ベイビィ 2003年−オールド・ボーイ、16歳の合衆国 2002年−エデンより彼方に、シカゴ、しあわせな孤独、ホワイト オランダー、フォーン・ブース、 マイノリティ リポート 2001年−ゴースト ワールド、少林サッカー 2000年−アメリカン サイコ、鬼が来た!、ガールファイト、クイルズ 1999年−アメリカン ビューティ、暗い日曜日、ツインフォールズアイダホ、ファイト クラブ、 マトリックス、マルコヴィッチの穴 1998年−イフ オンリー、イースト・ウエスト、ザ トゥルーマン ショー、ハピネス 1997年−オープン ユア アイズ、グッド ウィル ハンティング、クワトロ ディアス、 チェイシング エイミー、フェイク、ヘンリー・フール、ラリー フリント 1996年−この森で、天使はバスを降りた、ジャック、バードケージ、もののけ姫 1995年以前−ゲット ショーティ、シャイン、セヴン、トントンの夏休み、ミュート ウィットネス、 リーヴィング ラスヴェガス |
||||||
|