タクミシネマ       ダージリン急行

ダージリン急行   
ウェス・アンダーソン監督

 なぜ、この監督がもてるのか、よく判らない。
ロイヤル・テネンバウム」「ライフ アクアティック」の前2作も、予告編は面白そうだったので、
期待して見に行くとつまらなかった。
この映画もまったく同様で、予告編は本当に面白そうだった。
そのため、3度も騙されてしまった。

ダージリン急行 [DVD]
劇場パンフレットから

 映画は短い前編がある。
パリの小さなホテルに、一人の男が宿泊している。
そこに1人の女(ナタリー・ポートマン)が来る。
そして、2人はベッドへ入る。
しかし、その後の2人の関係は描かずに、あっという間に映画は終わってしまう。

 あれーっ、と思っていると、まったく関係ない次の映画がはじまる。
男(ビル・マーレイ)がインドの市内で、タクシーを急がせている。
列車に乗るらしいのだが、すでに列車は発車している。
ホームで列車を追うと、彼を追い越していく男がいる。
追い越した男は列車に乗れるが、最初の男は乗れずじまい。

 父親が死んで1年。
長男のフランシス(オーウェン・ウィルソン)が2人の弟を呼びだして、インド旅行を計画した。
3人はこの特別列車、ダージリン急行の客室で集合らしい。


 乗ったほうの男は、次男のピーター(エイドリアン・ブロディ)である。
客室に到達してみると、パリのホテルにいた男がいる。
その男は末の弟のジャック(ジェイソン・シュワルツマン)だった。
3人そろったところで、インド旅行がはじまる。

 この旅行をカメラで追うのだが、これが白人の異文化体験を描いたもので、
人種差別的な視線が強い。
おそらく監督たちが、インド旅行をして文化的な違いに、ひどく驚かされたのであろう。
その驚きを、ナイーヴに映像化したもので、幼稚きわまりない。

 列車を使ったロード・ムーヴィーとはいえ、
舞台になっている列車が、この映画のために仕立てられたもので、白人の好みを反映したものだ。
あんな列車がインドにあるわけがない。
それに母親(アンジェリカ・ヒューストン)が、修道院で尼僧になっている。
白人が修道院の偉いさんというのは、白人優位思想の反映だろう。

 白人が面白いと思うものを、インドの事情を無視したまま、スクリーンに並べたに過ぎない。
インドは混沌が支配すると言われるが、
それは白人たちから見ての話で、インド人たちにはきちんとした日常なのだ。
この映画のような描き方は、白人文明の浅薄さを浮き上がらせるだけだ。

 それに、最初の短編映画と、本編がつながっておらず、一体何が言いたかったのだろうか。
短編部分では、痩せギスなナタリー・ポートマンの肉体をさらすが、
本編では何もつながりがない。
それに彼女のアザも、何の説明もない。
ボブ・マーレイが列車に乗り遅れるが、それだって何の伏線にもなっていない。


 3人は無茶をやって、列車から放りだされて、田舎道を歩く。
途中、川で子供が流されるのを発見し、彼等が助けるが、それも嘘っぽい。
たった一つの見物は、彼等が持っていたたくさんのヴィトンのバックである。

しかし、札束でインド人の頬を叩いて作った映画で、不愉快な感じだった。
  2008年アメリカ映画
(2008.03.12)

TAKUMI シネマ>のおすすめ映画
2009年−私の中のあなたフロスト/ニクソン
2008年−ダーク ナイトバンテージ・ポイント
2007年−告発のときそれでもボクはやってない
2006年−家族の誕生V フォー・ヴァンデッタ
2005年−シリアナ
2004年−アイ、 ロボットヴェラ・ドレイクミリオンダラー ベイビィ
2003年−オールド・ボーイ16歳の合衆国
2002年−エデンより彼方にシカゴしあわせな孤独ホワイト オランダーフォーン・ブース
      マイノリティ リポート
2001年−ゴースト ワールド少林サッカー
2000年−アメリカン サイコ鬼が来た!ガールファイトクイルズ
1999年−アメリカン ビューティ暗い日曜日ツインフォールズアイダホファイト クラブ
      マトリックスマルコヴィッチの穴
1998年−イフ オンリーイースト・ウエストザ トゥルーマン ショーハピネス
1997年−オープン ユア アイズグッド ウィル ハンティングクワトロ ディアス
      チェイシング エイミーフェイクヘンリー・フールラリー フリント
1996年−この森で、天使はバスを降りたジャックバードケージもののけ姫
1995年以前−ゲット ショーティシャインセヴントントンの夏休みミュート ウィットネス
      リーヴィング ラスヴェガス

「タクミ シネマ」のトップに戻る