タクミシネマ        ワイルド シングス

ワイルド シングス     ジョン・マクノートン監督

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ワイルドシングス [DVD]
 凝った展開を持つサスペンス映画である。
何度も何度もどんでん返しがあり、観客はその度に驚かされる。
特別な仕掛けがあるわけでもなく、充分に練られた脚本に従って、自然にストーリーも展開していく。
しかし、なぜか引き込まれないのである。
面白い映画になる要素は、充分にもっている。
でも、本当におもしろい映画だったとは言えないのである。
面白い映画の決め手とは何なのだろうか、と疑問になる。

 高校教師のサム(マット・ディロン)は、フロリダきっての大金持ちの娘ケリー(デニーズ・リチャーズ)に、寝るように言い寄られる。
それを拒んだことから愛憎裏表となり、ケリーに強姦されたと告訴される。
しかし、級友のスージー(ネーブ・キャンベル)の証言により、冤罪であることがわかり、サムは無罪になる。
サムはケリーを名誉毀損で訴えるというと、ケリーの母親が850万ドルで示談にする。

 850万ドルもの高額示談金を不審に思った刑事のレイ(ケビン・ベーコン)は、母親から示談金を奪うための三人の狂言ではないかと捜査を始める。
そして、サムが示談金を独り占めするために、スージーとケリーが殺されると予測する。

 レイの予想どうり、まずスージーが殺される。
次にケリーが殺されると予測したレイは、ケリーを保護しに彼女の家に行くが、ケリーに反抗されてケリーを射殺してしまう。
二人がいなくなったここで、レイが実はサムの仲間で、レイとサムが山分けかと予測できる。
物語はその通りに進行し、刑事を首になったレイはサムのところへ行く。
しかし、ここで死んだ筈のスージーが登場し、レイを殺害する。
その後、スージーはサムをも殺害し、彼女が850万ドルを独り占めして、映画はおわりである。
最後の字幕が出てから、実は最初からスージーが仕組んだ犯罪だった、と種が明かされる。

 サムはスージーと肉体関係を持っていたが、それをネタにスージーがサムを脅して、狂言を仕組んだのが発端だが、それは伏せて映画は始まる。
サムに首ったけのケリーが、振られた腹いせに裁判になる。
しかし、ケリーの母親も、昔はサムとできていたと言うから、ちょっと首を傾げる。
この映画は、サムの高校生活から始まるが、そこに登場するのが皆美少女ばかり。
また、フロリダきっての大金持ちの妻が、淫乱そのものというのも通俗的で解せない設定である。

 お金持ちの私生活は、乱交的で非日常的だと思いこんでいる前提は、映画を絵空事にしてしまう。
通俗的なパターンにはまった設定は、観客を白けさせるばかりである。
金持ちであろうとも、常人とそれほど変わっているはずがなく、人物の設定をもっときちんとやった方がいい。
それに、この映画の最終目的がお金を取ることだというのも、印象を弱くしている。
満たされた世界では、お金が法を破る動機になり難くなっている。
殺人までしなくても生活していくことはできるから、スージーが実はIQ200近くもあるのだと後で種明かしされると、ますますそれなら余計不思議になってしまう。

 そうはいっても、そこそこに話はできており、娯楽映画としては見て損をしたというほどではない。
ディンギーが着岸からそのまま岡置きできるヨットハーバーや、スージーの部屋が面白い。
また、スージーを演じたネーブ・キャンベルがカッコ良く、今後が楽しみな女優さんである。

1998年アメリカ映画

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