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スパニッシュ プリズナー   デヴィッド・マメット監督

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スパニッシュ・プリズナー [DVD]
 会社員ジョー・ロス(キャンベル・スコット)は、プロセスというソフトを開発する。
それは同業他社が解明するには多大な時間がかかり、彼の会社に膨大な利益をもたらすものだった。
しかし、彼の会社の社長は、彼への成功報酬額をなかなか決めたがらず、カリブ海のエステフェ島での説明会が終わってもはっきりさせなかった。

 ジョーは新人秘書のスーザン(レベッカ・ピジョン)と一緒に海岸を散歩していた。
ジョーがスーザンの写真を撮ると、その時、彼が撮した写真機を1、000ドルで買いたいという男ジミー・デル(スティーブ・マーチン)が現れる。
ジョーは慇懃な姿勢に怒り、カメラをあげてしまう。
夜になると、ジミーが現れ、昼間の態度を謝罪する。
ニューヨークに戻ったら一緒に食事をしようともちかけ、妹のエバに渡してくれと言って、小包を手渡す。

 飛行機の中で中身が心配になったジョーは、小包を開けてみる。
するとそれは一冊の本だった。
ニューヨークに着いてから、彼はその本を妹のエバに届けるが、守衛に手渡してかえってくる。
翌日街で、ジミーを偶然見かけるが、ジミーは妹に直接手渡さなかったと怒る。
キツネに抓まれた感じで家に戻ると、スーザンが訪ねてくる。
スーザンから誘惑されているときに、ジミーから謝罪の電話がある。
翌日食事をしようと言う。

 土曜日に食事をしに行くと、そのレストランは土曜日は会員制で、非会員はお断りだという。
ジミーは親切にも、ジョーを会員にしてくれ、入会費は出世払いで良いという。
ジミーを信用したジョーは、社長との関係に悩んでいることを話す。
すると、ジミーは弁護士を紹介するという。
一度はその申し出を断るが、社長が弁護士をともなって雇用契約の延長を迫ったことから、ジミーの弁護士に話す。
しかし、若い女性だったはずのジミーの妹エバは、老婦人だったことが判り、ジョーは混乱する。

 訳が分からなくなったジョーは、スーザンから紹介されたfbi捜査官マキューン(フェリシティ・ハフマン)に電話をかける。
すると、ジミーは捜査中の詐欺師だと知らされる。
ジミーと会う前に、マキューンと落ち合い盗聴マイクを仕込まれる。
約束の場へ行っても、ジミーは表れなかった。
怪訝に思ってマキューンに電話をしてみると、その電話に出たのは男性だった。
しかも、持参のプロセスを広げてみると、中身は真っ白で何も書かれてなかった。

 インサイダー取引を疑われて、一度すでに警察に拘束された事のあるジョーは、相談相手にとジョージ(リッキージェイ)に電話する。
彼のアパートに行くと、すでに彼は殺されていた。
殺人の冤罪までかぶせられた彼はそこを逃げ出すが、スーザンの言葉に従ってジミーの存在を立証しようと、エステフェ島まで行くことにする。
しかし、飛行機に搭乗の途中で、本にも指紋があったことに気がついて、飛行機に乗らずに引き返す。

 エステフェ島行きだとばかり思っていた、スーザンが手配してくれた飛行機の切符は、何とベネズエラ行きだった。
しかもジョーが会員制のレストランでの入会申込書だと思ってサインしたのは、ベネズエラへの亡命申請書だった。
ベネズエラとアメリカとの間には、身柄引渡条約がなく、ベネズエラに行ってしまえば彼はアメリカに帰ることは出来なかった。
つまり、ジミー・スーザンを始め、会社がぐるになって、ジョーからプロセスを盗もうとしていたのだった。

 最後には、本物のFBIが登場し、ジミーたちを捕らえて、ハッピーエンドで終わる。
FBI捜査官というのが日本人である。
この映画では、日本人という台詞が何度も出てきて、しかも、プロセスを奪う黒幕が日本人だったりと、アメリカ映画でも良かれ悪しかれ日本の占める地位が、大きくなっていることが判る。

 詐欺師をめぐる映画だが、ジョーはごく普通の善良なサラリーマンである。
そのサラリーマンですら、内心に充分な報酬を得ていないと感じている。
小さな欲望があると詐欺に引っかかる。
詐欺とはもちろん騙す方が悪いが、騙される方にもそれを受け入れてしまう内心の欲望がある。
例えば外国での話し、うまい話があると言われて付いていくと、結果としてべらぼうな買い物をさせられていたなどと言う。
自分だけが上手い思いなど出来るわけがないのだ。
そんな話があれば、地元の人がとっくにのっている。

 買い物、女、麻薬、なんでもそうだが、非合法とは言わないまでも、何事も相場の金額を出すつもりでなくてはならない。
確かに外国人相手の店は、どこも高い。
だからついうまい話につられてしまう。
しかし、その高いのにも出店費用や安全性などきちんとした背景があり、単に暴利をむさぼっているわけではない。
上手い思いがしたいというこちらの心の動きが、詐欺師に付け入られる。

 映画としては、丁寧に作られたサスペンス映画である。
前半に様々な伏線を張ったのが、後半では次々と表れてきて、小気味よく使われていた。
サスペンス物ではどうしても偶然に頼りたくなるが、この映画ではそれは一ヶ所だけ。
ジョーが搭乗手続き中に、本に指紋があることを思い出して、引き返す場面だけだった。
なかなか良くできてはいるが、優等生的なつくりであるために、山がないように感じられた。
やはり最後に向けて、話をぐっと盛り上げていく、そんな展開が映画としては望まれる。

 スーザンを演じたレベッカ・ピジョンの麦わら帽子にサングラス、それにストライプのスーツ姿がとても格好良かった。
一部色の出が悪く、露出不足と感じられたが、全体的にはライティングが充分であるらしく、コダックのフィルムらしい発色の良さである。

1997年のアメリカ映画。


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